本レポートで扱う「アト旅」とは、旅先で気に入った商品を帰国後にもう一度買うことを指します。
要旨(3行で)
① 関西の製造直販型の施設では、台湾人旅行者のまとめ買い・大量購入がすでに起きています。
② 購入を止めているのは商品の魅力不足ではなく、言語・免税・海外発送・帰国後にもう一度買う方法という「仕組み」の不足でした。
③ 帰国したお客様の「もう一度買いたい」は、現地の業者経由の販売に流れるか、そのまま消えています。
「台湾人旅行者は、すでに日本の商品を買って帰っている。不足しているのは商品の魅力ではなく、帰国後にもう一度買うための導線である。」
何を調べたか
旅行者本人が公開している「本人たちの言葉」を読みました。大阪・京都南部・奈良・和歌山北部・兵庫東部の「製造直販×体験」型施設42件から、事前評価の上位24施設を選び、それらに言及する繁体字圏(台湾中心・香港含む)の公開情報を調査しています。
※対象は2026年7月時点で公開されている情報。無作為抽出ではありません。Googleマップのレビューは規約を考慮し、件数の参照のみで本文分析には使っていません。詳しい方法と限界は文末に記載しています。
分かったこと① まとめ買いは、すでに起きている
分かったこと② 止めているのは、商品ではなく「仕組み」
旅行記・レビューに現れた壁は4つでした(施設が特定されないよう、傾向として書いています)。
説明が日本語のみ。多くは「それでも楽しかった」と続きますが、商品の背景や買い方が伝わる機会を減らしています。
免税に対応していないことを惜しむ声がありました。
海外発送への不安と、発送手段の不在。買いたくても運べない量があります。
これは不満としてすら書かれません。書かれないまま、売上の機会だけが消えています。
「説明が日本語のみ」への言及があった施設
24施設中 5施設(レビュー・旅行記で確認できたもの)
「需要がないのではない。需要と顧客データを、施設自身が直接捉える仕組みがないのである。」
分かったこと③ 台湾のネット通販では、もう売られている
淡路島・薫寿堂のお香は台湾・香港の通販サイトで流通し、湯浅・角長の醤油は台湾の食材通販で購入でき、中野BCの梅酒には台湾の輸入代理店が複数あります。買える場所さえあれば、台湾の消費者は買っているのです。
ただし多くの場合、売っているのは現地の業者であって、施設自身ではありません。誰が・何を・なぜ買っているのかというデータと、お客様との接点は、施設には残りません。
記事で名前を挙げた12施設は、帰国後に「買い続けられる」か
公式サイト・現地通販の公開情報から確認(2026年7月時点)
英語ストア等で発送に対応
売れているが、お客様の情報は施設に残らない
帰国したお客様は買い続けられない
カテゴリ別の傾向
体験(石臼挽き・茶摘み)と購入が最も強く結びつく。「その場でしか得られない品質」への言及が多い。
手作り体験の完成品を「持ち帰れる」こと自体が満足点。日持ちする焼き菓子・金平糖は土産適性が高い。
発祥地や製法の物語と結びつき、試食からの購入転換が具体的に記録されている。
軽量で持ち帰りやすく、台湾ECでの流通も確認。アト旅と相性の良いカテゴリ。
名入れなど「自分だけの一点」化が購入動機。高単価だが免税・発送への対応が追いついていない。
見学・試飲からの購入は活発だが、持ち帰り数量や輸送の制約への言及がみられる。
調査で名前が挙がった施設(施設別レポート)
各施設が台湾・香港の旅行者からどう語られているかを、1施設ずつ整理しました。掲載はすべて公開情報に基づき、費用は一切発生していません。
この調査の限界(正直に)
① 分析対象は事前評価で選んだ24施設で、無作為抽出ではありません。② 旅行記を書くのは発信意欲の高い旅行者に偏る可能性があります。③ レビュー約1,500件は蓄積状況の参照で、全件を読んだわけではありません。④ 帰国後に実際に起きている行動(もう一度探した・買おうとして諦めた)は、公開情報では捉えられません。
この「帰国後の実際の行動」こそ、今回いちばん明らかにできなかった部分であり、次の調査の主題です。
次の調査:実際の店頭で測ります
旅行中の商品との出会い→店頭での登録→帰国後の閲覧→再購入→買い続ける、という一連の行動を、実際の施設と共同で追跡する実測調査を計画しています。参加は無償で、参加施設には自施設の分析と実測データをすべてお返しします。
調査概要
出典・参照資料
・市場データ:日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計2025年年間値/観光庁インバウンド消費動向調査2025年暦年
・購買・持ち帰りの記録:台湾・香港の公開旅行ブログおよびメディア記事(波比看世界、莉芙小姐愛旅遊、小氣少年、痞客邦、WOW!自遊人ほか)、TripAdvisor各施設ページ
・台湾ECでの流通:Shopee台湾、台湾食材EC等の公開商品ページ
・確認日:2026年7月18日。障壁に関する記述は、施設が特定される形での個別出典表示を行っていません(研究目的の照会には個別に開示します)