ATOTABI LAB
アト旅研究所
RESEARCH REPORT #001

台湾人旅行者は日本で何を買って帰るのか

──旅行記・レビューから見えた関西の名品と、「アト旅」の空白

ATOTABI LAB|2026年8月17日公開|運営:スーパースプーン
アト旅=旅のアトにもう一度買われること。その導線が途切れている図

本レポートで扱う「アト旅」とは、旅先で気に入った商品を帰国後にもう一度買うことを指します。

要旨(3行で)

① 関西の製造直販型の施設では、台湾人旅行者のまとめ買い・大量購入がすでに起きています。

② 購入を止めているのは商品の魅力不足ではなく、言語・免税・海外発送・帰国後にもう一度買う方法という「仕組み」の不足でした。

③ 帰国したお客様の「もう一度買いたい」は、現地の業者経由の販売に流れるか、そのまま消えています。

「台湾人旅行者は、すでに日本の商品を買って帰っている。不足しているのは商品の魅力ではなく、帰国後にもう一度買うための導線である。」

何を調べたか

旅行者本人が公開している「本人たちの言葉」を読みました。大阪・京都南部・奈良・和歌山北部・兵庫東部の「製造直販×体験」型施設42件から、事前評価の上位24施設を選び、それらに言及する繁体字圏(台湾中心・香港含む)の公開情報を調査しています。

40本
旅行記・ブログ・記事を精読
1,500件
レビューの蓄積状況を参照
24施設
42件から選んだ分析対象
10ページ
台湾の予約サイト・ECを確認

※対象は2026年7月時点で公開されている情報。無作為抽出ではありません。Googleマップのレビューは規約を考慮し、件数の参照のみで本文分析には使っていません。詳しい方法と限界は文末に記載しています。

分かったこと① まとめ買いは、すでに起きている

宇治・中村藤吉本店では、台湾の旅行ブログがお土産(伴手禮)リストを独立したコーナーとして掲載。神戸・灘五郷の酒蔵資料館(菊正宗酒造記念館・白鶴酒造資料館)には「両館を巡って計4本購入した」という旅行記。和歌山・湯浅醤油は香港のメディアが「見学の後は人気の醤油を買って帰る」と明記。紀州梅干館の旅行記には「梅の海老煎餅は必買。一行でカゴごと買い占めた」という記述。京都・甘春堂の和菓子手作り体験は「作った和菓子をすべて箱に詰めて持ち帰れる」ことが繰り返し満足点として語られていました。

共通するのは、買い物が観光の「ついで」ではなく、旅の主題として語られていることです。

分かったこと② 止めているのは、商品ではなく「仕組み」

旅行記・レビューに現れた壁は4つでした(施設が特定されないよう、傾向として書いています)。

言語のかべ

説明が日本語のみ。多くは「それでも楽しかった」と続きますが、商品の背景や買い方が伝わる機会を減らしています。

免税ができない

免税に対応していないことを惜しむ声がありました。

持ち帰れない・送れない

海外発送への不安と、発送手段の不在。買いたくても運べない量があります。

帰国後に買う方法がない

これは不満としてすら書かれません。書かれないまま、売上の機会だけが消えています。

「説明が日本語のみ」への言及があった施設

24施設中 5施設(レビュー・旅行記で確認できたもの)

説明が日本語のみであることへの言及あり説明が日本語のみであることへの言及あり説明が日本語のみであることへの言及あり説明が日本語のみであることへの言及あり説明が日本語のみであることへの言及あり言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし言及なし

「需要がないのではない。需要と顧客データを、施設自身が直接捉える仕組みがないのである。」

分かったこと③ 台湾のネット通販では、もう売られている

淡路島・薫寿堂のお香は台湾・香港の通販サイトで流通し、湯浅・角長の醤油は台湾の食材通販で購入でき、中野BCの梅酒には台湾の輸入代理店が複数あります。買える場所さえあれば、台湾の消費者は買っているのです。

ただし多くの場合、売っているのは現地の業者であって、施設自身ではありません。誰が・何を・なぜ買っているのかというデータと、お客様との接点は、施設には残りません。

記事で名前を挙げた12施設は、帰国後に「買い続けられる」か

公式サイト・現地通販の公開情報から確認(2026年7月時点)

自社の通販で海外から買える:3施設 現地の業者経由でのみ買える:5施設 海外から買う手段がほぼない:4施設 3施設 5施設 4施設
自社の通販で海外から買える
英語ストア等で発送に対応
現地の業者経由でのみ買える
売れているが、お客様の情報は施設に残らない
海外から買う手段がほぼない
帰国したお客様は買い続けられない

分かったこと④ 高評価なのに、まだ知られていない施設がある

堺・實光刃物は旅行サイトで4.8という評価と「名入れ」の購入体験を持ちながら、台湾の旅行記ではほぼ言及がありません。こんぶ土居、コンペイトウミュージアム堺も同じく、繁体字圏ではまだ「発見」されていない状態です。魅力が足りないのではなく、届いていないだけ——それがこの調査の結論のひとつです。

カテゴリ別の傾向

茶

体験(石臼挽き・茶摘み)と購入が最も強く結びつく。「その場でしか得られない品質」への言及が多い。

菓子

手作り体験の完成品を「持ち帰れる」こと自体が満足点。日持ちする焼き菓子・金平糖は土産適性が高い。

調味料(醤油・だし・梅)

発祥地や製法の物語と結びつき、試食からの購入転換が具体的に記録されている。

お香・線香

軽量で持ち帰りやすく、台湾ECでの流通も確認。アト旅と相性の良いカテゴリ。

工芸(刃物等)

名入れなど「自分だけの一点」化が購入動機。高単価だが免税・発送への対応が追いついていない。

酒

見学・試飲からの購入は活発だが、持ち帰り数量や輸送の制約への言及がみられる。

調査で名前が挙がった施設(施設別レポート)

各施設が台湾・香港の旅行者からどう語られているかを、1施設ずつ整理しました。掲載はすべて公開情報に基づき、費用は一切発生していません。

この調査の限界(正直に)

① 分析対象は事前評価で選んだ24施設で、無作為抽出ではありません。② 旅行記を書くのは発信意欲の高い旅行者に偏る可能性があります。③ レビュー約1,500件は蓄積状況の参照で、全件を読んだわけではありません。④ 帰国後に実際に起きている行動(もう一度探した・買おうとして諦めた)は、公開情報では捉えられません。

この「帰国後の実際の行動」こそ、今回いちばん明らかにできなかった部分であり、次の調査の主題です。

次の調査:実際の店頭で測ります

旅行中の商品との出会い→店頭での登録→帰国後の閲覧→再購入→買い続ける、という一連の行動を、実際の施設と共同で追跡する実測調査を計画しています。参加は無償で、参加施設には自施設の分析と実測データをすべてお返しします。

調査概要

対象期間:2026年7月時点で公開されている情報(参照記事の公開時期は2014年〜2026年に分布するため、継続的に確認される傾向のみを記述)
調査対象:大阪・京都南部・奈良・和歌山北部・兵庫東部の「製造直販×体験」型施設42件から事前評価上位24施設。台湾を中心とする繁体字圏(香港含む)の公開旅行情報
調査方法:①旅行記・ブログ・メディア記事 約40本の精読 ②旅行プラットフォーム(TripAdvisor)のレビュー約1,500件の蓄積状況・評価傾向の参照と代表的な投稿の精読 ③台湾系予約サイト(KKday・KLOOK)の関連ページ約10件の確認 ④台湾ECでの流通状況の確認
判定基準:繁体字圏の判定は、繁体字での記述・媒体の所在・筆者の自己申告による(氏名・外見からの推定は行わない)。Googleマップのレビューは規約を考慮し件数の参照のみ

出典・参照資料

・市場データ:日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計2025年年間値/観光庁インバウンド消費動向調査2025年暦年

・購買・持ち帰りの記録:台湾・香港の公開旅行ブログおよびメディア記事(波比看世界、莉芙小姐愛旅遊、小氣少年、痞客邦、WOW!自遊人ほか)、TripAdvisor各施設ページ

・台湾ECでの流通:Shopee台湾、台湾食材EC等の公開商品ページ

・確認日:2026年7月18日。障壁に関する記述は、施設が特定される形での個別出典表示を行っていません(研究目的の照会には個別に開示します)